森田 政士Masashi Morita
ラ・テールには、初代の栄徳シェフに呼ばれて来ました。 栄徳さんとは以前一緒に働いていたことがあり、くされ縁という感じで(笑)。 一度目は1年以内で地元熊本でレストランブーランジェリーの立ち上げの話があって 故郷へ帰ったのですが、 ラ・テールの素材にこだわるパン作りの面白さが忘れられず、また戻ってきました。
初期のラ・テールは石窯を生かして、ハード系のパンが多めでしたが、 もっとお客様に受け入れてもらえるスタイルを、と栄徳シェフと一緒に、手探りで作ってきました。 その中で、国産小麦で食パンを作ってみたり、熊本阿蘇のジャージー牛乳など自分が地元で慣れ親しんできた素材を取り入れてみたり... とにかく、シェフと協力しながらラ・テールのスタイルを少しずつ作ってきた感じですね。
その中でやっぱり面白かったのは、他のお店だったら「この原材料は(仕入れ値が)高いから使えない」となるところが ラ・テールでは、「高いけど、どうやったら使えるだろう」と、自分たちで努力して 解決策を探していく姿勢があること。 お店は大きくなり、簡単なことではありませんが、これは今のラ・テールでも変わりません。
日本の農業は、今決して楽観できる状況ではないと思いますが、 色んなことに積極的にチャレンジしている生産者も多くいらっしゃいます。 ラ・テールでも、製造スタッフが生産者の方を訪ねてお話を伺う生産者訪問をやっていますが、 やはり実際にお会いすると、いつも自分達が使っている農産物に込めれた思いを 深く知ることができます。
そして今改めて思うのは、そんな生産者の方とラ・テールの間に、 強い信頼関係を作っていきたいということ。 値段やコストを気にしながら、売る、仕入れるということでなく、互いに感謝し、信頼し合えるような関係を目指していきたいんです。
例えば、小麦農家の方から新麦ができたら、「ぜひラ・テールで今年も美味しいパンにしてほしい」と小麦を送ってもらったり、 少し傷がついてそのまま商品としては使えない果物を 「美味しいデニッシュにしてほしい」と、安く譲ってもらったり...。 私たちが作ったパンも食べてもらったりして、 生産者の方も「こんなに美味しいパンになるんだ」って、パンになることを楽しみに農産物を送ってくれるような、 そんな関係になれるといいなと思っています。
そして、それがお客様に少しでもお買い求めいただきやすい価格帯のパンを作ることにつながるのではないかと思うのです。 そんな努力も積み重ねながら、 素材にこだわった、ラ・テールらしいパンを多くのお客さまにお届けしていきたいですね。